李禹煥 Lee Ufan (リ・ウファン)
1936年韓国慶尚南道生まれ。現在、多摩美術大学教授。 1956年ソウル大学校美術大学を中退、日本へ密航。日本大学で哲学を専攻する。 以後、日本を拠点に本格的創作活動を展開。60年代末に起点が認められる「もの派」の中心 的なイデオローグとして、この運動の背後にある理念を著書「出会いを求めて」などで言語化 する役割を果たす。そこには、自己の表象欲の対象化を目的とした制作活動から生まれる作品 とそれを支える西欧的な美術観への異議申し立てが成されている。李禹煥は、作品を「対象と 化せず、関係のありようを見えるようにする構造」を持った装置とすることにより、世界の自 然性とリアリティとの触れ合いへと誘う「場」として機能するように設計していると言える。 視ることにより、世界(外部)と一体となった自己(内部)を感得することとなるのだ。この 極めて東洋的とも言える自然観に根ざした制作の在りようには、西欧的価値基準とその文脈に より構築された美術マーケットに対して、どのように東洋的であると言う特質を打ち出し、差 異化を計るかと言う戦略が隠されていることは言うまでもない。現に、李禹煥は活動の拠点を パリに移し、すでにヨーロッパにおいては、確固とした名声を獲得するに至っている。
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